毎日暑いですが空気がやや秋めいてきました。のでぼちぼちブログに向かおうかと思います。
水さんとみなこと、雪組の8名の皆様の退団公演。
この間の日曜11時半がマイ楽でした。(千秋楽中継は見ますが)
大劇で3回、東宝で3回、計6回見ました。ショーはブルース3回、ラテン3回と結果的にバランス良くてラッキーでした。一番好きな場面はオペラ座幻想かな。水みなががっちり組んでくれているし、深読み妄想し甲斐があるし(笑)。あのオペラ座はヴェネツィアのフェニーチェ座なのだと勝手に思っています。はらはらと舞い落ちる赤い羽根。不死鳥の名を持つ、水の都の、炎で焼け落ちた劇場。
あでもせしるチェック視点ではオープニングが良かったです!傾(かぶ)いた髪型でオラオラやってるのが超好みだった!あとギャングのとこもピン撮り。
まとまらないままに、それでも千秋楽前に何か書いておきたくて『ロジェ』の感想を。ちなみに私は基本正塚作品には点が甘く『ロジェ』も好きなので、趣味が合わない方は続きはクリックせずにスルーしていただけると幸甚です。
水さんとみなこと、雪組の8名の皆様の退団公演。
この間の日曜11時半がマイ楽でした。(千秋楽中継は見ますが)
大劇で3回、東宝で3回、計6回見ました。ショーはブルース3回、ラテン3回と結果的にバランス良くてラッキーでした。一番好きな場面はオペラ座幻想かな。水みなががっちり組んでくれているし、深読み妄想し甲斐があるし(笑)。あのオペラ座はヴェネツィアのフェニーチェ座なのだと勝手に思っています。はらはらと舞い落ちる赤い羽根。不死鳥の名を持つ、水の都の、炎で焼け落ちた劇場。
あでもせしるチェック視点ではオープニングが良かったです!傾(かぶ)いた髪型でオラオラやってるのが超好みだった!あとギャングのとこもピン撮り。
まとまらないままに、それでも千秋楽前に何か書いておきたくて『ロジェ』の感想を。ちなみに私は基本正塚作品には点が甘く『ロジェ』も好きなので、趣味が合わない方は続きはクリックせずにスルーしていただけると幸甚です。
***
多分、私は正塚作品の、世界観や基本スタンスがツボに合うのだと思います。
水さん主演で正塚作品と言うと言わずと知れた『マリポーサの花』を思い出しますが、『マリポーサ』のネロが世界を背負い込んでいたのに対して、『ロジェ』はとても個人的な話だなあと。
ロジェ個人の復讐の話。両親と妹を目の前で殺された少年の、その清算のための人生。それは世界に比べればとても小さな問題で、でもロジェにとっては世界の全てだ。
そして、復讐が世界の全てだったロジェが、その世界から一歩踏み出す話。常に復讐を忘れずそのためだけに生きてきたロジェは、人としていびつだ。あちこちで既に語られているけれど、ある意味精神的に子供な部分がある。一応日常生活を大過なく送っているし軍人とか刑事としての能力はあるし表面上は他人と人間関係を築くことはできるけれど、復讐、という自分の大きな部分を占めることと無関係には他人と付き合うことができない。レアと個人的な話をしたのも彼女が戦犯を追っている(しかもそこに両親が収容所にいたという個人的な理由がある)からだし、リオンに本音を漏らすきっかけも、彼に妹がいたと知ったから。
でも、そんなきっかけでも他人と関わって、相手からも関わられて。
そして、ついに追い詰めた相手は冷酷な悪魔でも極悪人でもなく、弱さと善意を持ち合わせた普通の人間で。
結局ロジェは、復讐のために生きてきた生き方を完遂できなかった。
その、いびつな、精神的にアンバランスな、でも基本的にまっとうで善い(そうでなければ復讐のためにわざわざ諜報員だの刑事だのにならないだろう)人間が、復讐=人殺しを諦めて、解き放たれるまでの話。
何と言うか、水さんの「人間を演じる力」が総動員、フルに発揮された役だなあと思ったのです。
人として歪んでいる部分もあるし間違った言動もある。でもロジェはそういう人間で、そういう人生を送ってきた。確かにそこに存在している。その、自然な説得力。
24年間追い続けたシュミットを撃てなかった時の、何とも表現しがたい怒号のような呻き声。決して格好よくはない、でも確かにそれは彼の魂の、腹の底からの叫びだったと思えるのです。
というところまでは大劇の段階で思っていたのですが。
東宝で見て、若干印象が違った。
何だか、ロジェの態度、台詞の言い方、雰囲気に荒々しさが増したように感じた。温度は上がっていない。むしろ乾いている。殺伐としたような。
同時に、彼と対峙するレアも、感情の抑えが少し外れたようで。戦犯を告発する仕事をしている理由を問われた時の答えが、大劇では比較的淡々としていたのが、東宝では抑えきれない感情で声が高まり、口調が激しくなっているように感じた。結果、この二人のやり取りの緊張感が増したように。
9/5のマイ楽は、幸いにして自分的に特に集中して見られた。舞台がどうという訳ではないのだろうけれど、自分の体調や気分によって集中力は変わる。そしてロジェは集中して観ることが求められる舞台だと思うので、最後の回をテンションを保って観られて良かった。
集中して、ロジェに感情移入、というのは少し違うけれど、ロジェの内面に入り込むように言動や表情の一つ一つを追って、物語の最後に辿りついたとき、「復讐」の意味合いが少し違って見えた。
ロジェの「家族を裏切ったような気がする」という言葉が、かつてない重みで苦しく響いた。
「復讐」は「贖罪」だった。家族でひとりだけ生き残ってしまったことへの。「移ろい続ける世界に居場所を求める気はない」と彼は歌っていた。ひとりだけここに安住することはできない。失われた家族が大事だから、この世界よりも家族のために生きなければならないから。
だから、レアが収容所で生き残った両親を語る「意味のない罪悪感を持って生きている」という言葉が呼応する。そしてそれらの罪悪感を包括して「戦争のせいなのよ」という言葉で救おうとする。彼らが死に自分が生き残ったのはロジェのせいでも両親のせいでもない、戦争と言う狂った時代のせいというメッセージ。
最初、ここで「君のやり方で復讐している」と言われたレアが否定しないのは違和感があった。でも、今回、やはり彼女も復讐しているのかもしれない、と思えた。
但し、それはナチスに対する復讐ではない。人の命を奪い生き残った人を苦しめる戦争というもの、そしてその戦争を生み出してしまう世界に対する復讐。理不尽な世界に対して、人の理性と努力で正義を恢復しようと挑む戦い。
もしかしたらロジェの復讐も、そういうものにシフトする可能性があるかもしれない、と思う。リオンとの銀橋で歌っているように、不正を見逃せない本能に従って。
ラストの銀橋ソロ「交わす思いは自分なりの愛だと」というフレーズが好きだ。ロジェは復讐のためだけに生きてきたつもりだけれど、それでも24年間日常を過ごしてきた中には、誰かと心を通わせたこともあっただろう。今やっとそのことに気づけた、という感じで。
どんなに復讐にがんじがらめになっているようでも、根本的に普通の心を持った人間なのだと思えるところが、水さんの個性であり素晴らしいところなのだと思う。
ロジェは、水さんの「人間を演じる力」がフルに発揮された役だなあ、と思っています。
みなこちゃん演じるレアが好きです。
しっかり仕事をしてるとこも好きだし、ロジェに思いを寄せるときの不器用さも好きだし、ただじっとロジェを見守る姿も好きだ。
「こんな時ひとりでいないほうがいい」と、相手が何を言っても譲らずに側にいる姿に、多分彼女は、人の心を慮ることができる、本当に必要な時に必要なことができる人なのだと思った。
その後、ロジェとシュミットが対峙する時も、何も言わずただじっと見守って、見つめている。どんな結末になろうと、見守ると決めた、そのままに。
最後盆が回って暗転の中消えていく、静かな微笑みを湛えたその顔が美しくて、毎回必ずオペラで追っていました。
キムのレオンが歌う銀橋の歌は、作品テーマであり、ロジェの「移ろい続ける世界に居場所を求める気はない」へのアンサーソングなんだと、勝手に思っています。世界を肯定し希望に前を向く歌。「どれほど人を知り世界を見るのだろう」と。その、地に足を着けて未来を見つめ世界を肯定する光が、キム君の持ち味なんだろう。
レアもそうなんですが、彼もまた必要と感じた時に手を伸ばすのを躊躇わない人間。「お前と同じだけお前の気持ちはわからない、だが想像はつく」と言い切れる男。
彼がロジェの側にいてくれて、良かったんだと思う。
とりあえずまとまらないままにこの辺で。
余談ながら、最後銀橋にひとり水さんがいて他の出演者が本舞台でそれを見送る場面、前に出てくるときに両隣りの娘役さん(リサリサと多分あゆちゃん)とのアイコンタクトを欠かさないせしるが好きです。君ほんとそういうとこマメだな(笑)。
多分、私は正塚作品の、世界観や基本スタンスがツボに合うのだと思います。
水さん主演で正塚作品と言うと言わずと知れた『マリポーサの花』を思い出しますが、『マリポーサ』のネロが世界を背負い込んでいたのに対して、『ロジェ』はとても個人的な話だなあと。
ロジェ個人の復讐の話。両親と妹を目の前で殺された少年の、その清算のための人生。それは世界に比べればとても小さな問題で、でもロジェにとっては世界の全てだ。
そして、復讐が世界の全てだったロジェが、その世界から一歩踏み出す話。常に復讐を忘れずそのためだけに生きてきたロジェは、人としていびつだ。あちこちで既に語られているけれど、ある意味精神的に子供な部分がある。一応日常生活を大過なく送っているし軍人とか刑事としての能力はあるし表面上は他人と人間関係を築くことはできるけれど、復讐、という自分の大きな部分を占めることと無関係には他人と付き合うことができない。レアと個人的な話をしたのも彼女が戦犯を追っている(しかもそこに両親が収容所にいたという個人的な理由がある)からだし、リオンに本音を漏らすきっかけも、彼に妹がいたと知ったから。
でも、そんなきっかけでも他人と関わって、相手からも関わられて。
そして、ついに追い詰めた相手は冷酷な悪魔でも極悪人でもなく、弱さと善意を持ち合わせた普通の人間で。
結局ロジェは、復讐のために生きてきた生き方を完遂できなかった。
その、いびつな、精神的にアンバランスな、でも基本的にまっとうで善い(そうでなければ復讐のためにわざわざ諜報員だの刑事だのにならないだろう)人間が、復讐=人殺しを諦めて、解き放たれるまでの話。
何と言うか、水さんの「人間を演じる力」が総動員、フルに発揮された役だなあと思ったのです。
人として歪んでいる部分もあるし間違った言動もある。でもロジェはそういう人間で、そういう人生を送ってきた。確かにそこに存在している。その、自然な説得力。
24年間追い続けたシュミットを撃てなかった時の、何とも表現しがたい怒号のような呻き声。決して格好よくはない、でも確かにそれは彼の魂の、腹の底からの叫びだったと思えるのです。
というところまでは大劇の段階で思っていたのですが。
東宝で見て、若干印象が違った。
何だか、ロジェの態度、台詞の言い方、雰囲気に荒々しさが増したように感じた。温度は上がっていない。むしろ乾いている。殺伐としたような。
同時に、彼と対峙するレアも、感情の抑えが少し外れたようで。戦犯を告発する仕事をしている理由を問われた時の答えが、大劇では比較的淡々としていたのが、東宝では抑えきれない感情で声が高まり、口調が激しくなっているように感じた。結果、この二人のやり取りの緊張感が増したように。
9/5のマイ楽は、幸いにして自分的に特に集中して見られた。舞台がどうという訳ではないのだろうけれど、自分の体調や気分によって集中力は変わる。そしてロジェは集中して観ることが求められる舞台だと思うので、最後の回をテンションを保って観られて良かった。
集中して、ロジェに感情移入、というのは少し違うけれど、ロジェの内面に入り込むように言動や表情の一つ一つを追って、物語の最後に辿りついたとき、「復讐」の意味合いが少し違って見えた。
ロジェの「家族を裏切ったような気がする」という言葉が、かつてない重みで苦しく響いた。
「復讐」は「贖罪」だった。家族でひとりだけ生き残ってしまったことへの。「移ろい続ける世界に居場所を求める気はない」と彼は歌っていた。ひとりだけここに安住することはできない。失われた家族が大事だから、この世界よりも家族のために生きなければならないから。
だから、レアが収容所で生き残った両親を語る「意味のない罪悪感を持って生きている」という言葉が呼応する。そしてそれらの罪悪感を包括して「戦争のせいなのよ」という言葉で救おうとする。彼らが死に自分が生き残ったのはロジェのせいでも両親のせいでもない、戦争と言う狂った時代のせいというメッセージ。
最初、ここで「君のやり方で復讐している」と言われたレアが否定しないのは違和感があった。でも、今回、やはり彼女も復讐しているのかもしれない、と思えた。
但し、それはナチスに対する復讐ではない。人の命を奪い生き残った人を苦しめる戦争というもの、そしてその戦争を生み出してしまう世界に対する復讐。理不尽な世界に対して、人の理性と努力で正義を恢復しようと挑む戦い。
もしかしたらロジェの復讐も、そういうものにシフトする可能性があるかもしれない、と思う。リオンとの銀橋で歌っているように、不正を見逃せない本能に従って。
ラストの銀橋ソロ「交わす思いは自分なりの愛だと」というフレーズが好きだ。ロジェは復讐のためだけに生きてきたつもりだけれど、それでも24年間日常を過ごしてきた中には、誰かと心を通わせたこともあっただろう。今やっとそのことに気づけた、という感じで。
どんなに復讐にがんじがらめになっているようでも、根本的に普通の心を持った人間なのだと思えるところが、水さんの個性であり素晴らしいところなのだと思う。
ロジェは、水さんの「人間を演じる力」がフルに発揮された役だなあ、と思っています。
みなこちゃん演じるレアが好きです。
しっかり仕事をしてるとこも好きだし、ロジェに思いを寄せるときの不器用さも好きだし、ただじっとロジェを見守る姿も好きだ。
「こんな時ひとりでいないほうがいい」と、相手が何を言っても譲らずに側にいる姿に、多分彼女は、人の心を慮ることができる、本当に必要な時に必要なことができる人なのだと思った。
その後、ロジェとシュミットが対峙する時も、何も言わずただじっと見守って、見つめている。どんな結末になろうと、見守ると決めた、そのままに。
最後盆が回って暗転の中消えていく、静かな微笑みを湛えたその顔が美しくて、毎回必ずオペラで追っていました。
キムのレオンが歌う銀橋の歌は、作品テーマであり、ロジェの「移ろい続ける世界に居場所を求める気はない」へのアンサーソングなんだと、勝手に思っています。世界を肯定し希望に前を向く歌。「どれほど人を知り世界を見るのだろう」と。その、地に足を着けて未来を見つめ世界を肯定する光が、キム君の持ち味なんだろう。
レアもそうなんですが、彼もまた必要と感じた時に手を伸ばすのを躊躇わない人間。「お前と同じだけお前の気持ちはわからない、だが想像はつく」と言い切れる男。
彼がロジェの側にいてくれて、良かったんだと思う。
とりあえずまとまらないままにこの辺で。
余談ながら、最後銀橋にひとり水さんがいて他の出演者が本舞台でそれを見送る場面、前に出てくるときに両隣りの娘役さん(リサリサと多分あゆちゃん)とのアイコンタクトを欠かさないせしるが好きです。君ほんとそういうとこマメだな(笑)。
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